旅行写真記 -チェコ2-

プラハ観光のメインの一つ、プラハ城。丘の上にそびえ建つ城はプラハの象徴的な景色の一つです。お城と言っても敷地内にはいくつかの教会があったり建物があったりで、一つの街のようになっていました。特に目立って見える巨大な塔も実は聖ヴィート大聖堂です。中に入るととても美しいステンドグラスが並んでいます。芸術の世界に身を置きながら不勉強なので建築様式など詳しいことはまるで分からないのですが、それでも見れば荘厳さをひしひしと感じる素晴らしい聖堂でした。

聖ヴィート大聖堂に劣らず素晴らしかったのは、ホテルのすぐ横に建っていた聖ミクラーシュ教会です。個人的にはこちらの方が素晴らしく感じました。中に入ると大きな空間に巨大な天井画。良く見ると実際の柱の上に絵の柱が描き足され、その上に割れた地面から空が覗き、そこに天使や聖人が浮かんでいるという構図。トリックアートのように教会の中に天井世界を出現させており、その創意工夫がとても面白く感じられました。またこの教会では二階通路に上がれ、そこが一部宗教画のギャラリーになっているのですが、それよりもバルコニーから一階部分を見下ろすという眺めが新鮮で、そちらの方が魅力的に思えました。立ち並ぶ聖人像もどれも3mはあろうかという大きなものでドーム部分の彫刻や絵は高すぎて何があるのか良く分からないレベル。しかしとにかくそのスケール感に圧倒されました。

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プラハ市内にはお洒落で素敵なお店が沢山ありました。上品でお洒落なカフェから童話の世界のまんまのような玩具屋さんも。いかにも海外初心者というような話をしますが、新鮮だったのはお店に入ったときの挨拶マナー。お店に入るときはまず「ドブリーデン(こんにちは)」と声をかけ、そうすると向こうも「ドブリーデン」と返してくれる。日本ではお店に入るときに挨拶をするという文化がないので最初は気恥ずかしくも思えますが、考えてみればこちらの方が健全だよなぁと思います。見慣れぬ土地ということもあって、チェコの人たちは一見ムスッとした表情にも思えますが、挨拶をするとニッコリと微笑んでくれたりして、とってもチャーミングな人が多かったです。特にとある画材屋さんに入ったとき丸々と太って頬が赤い絵に描いたようなおじいさんがこちらをちらっと見て、元気良く「ドブリーデェン!」と返してくれたのがとても微笑ましくて記憶に残っています。

チェコはビールの消費量が世界一というほどビールで有名な国なのですが、ビールの飲めない僕としてはビールそのものより酒場に描かれている可愛いイラストの方が気になります。チェコではお馴染みの「善良な兵士シュベイク」の絵です。ヤロスラフ・ハシェクの書いた物語で挿絵を描いているのはチェコの国民的絵本作家であるヨゼフ・ラダ。またこの物語はイジー・トゥルンカの手によって人形アニメーションにもなっています。チェコでは酒場のトレードマークとなっており、シュベイクグッズも新しいものから古いものまで沢山あります。実は今回の旅で是非手に入れたかったものにこのシュベイクの人形があって、市内の古道具屋さんを見かけては中を物色していました。するといかにも昔からある感じの古道具屋さんの棚の中に沢山の物に囲まれてちょこんと立っている古めかしいシュベイク人形を発見!まさに思い描いていた姿にときめく胸を落ち着かせて、店主のおじいさんに言って棚から出してもらいチェコ語で「トフレ・プロスィーム(これください)!」。お金を支払って品物を受け取ったら「ヂェクイ(ありがとう!」。これがチェコでの(そして海外での)初めてのお買い物でした。嬉しかった。(一つ上の写真がそのとき買った人形です。)

そうそうチェコの通貨は「コルナ」。なんだか可愛い響きですよね。

カフェ、レストラン、古道具屋、お城、教会。どれも素晴らしいですが、僕にとってチェコと言ったら何か。それは絵本です。絵本大国チェコ。このサイトを見られている方はお気づきかもしれませんが僕は絵本が好きで、コレクターの気もあり家には結構な数の絵本があります。チェコ絵本といえば業界では(何業界だ)一大ジャンルを形成するほどに有名です。またそれに伴う形でアニメーションもとても魅力的で(チェコアニメは絵本原作のアニメも多い)、既に名前が挙がっていますがイジー・トゥルンカなどは人形アニメーション界の巨匠です。そんなわけで絵本好き且つアニメーション作家である僕は、チェコの絵本・アニメーション文化にとても大きな影響を受けてきました。そんな憧れの地チェコですから、観光名所のことは全く調べていなくても、プラハ市内の「ANTIKVARIAT(古本屋)」の場所はきっちり調べて地図にマークをつけておきました。滞在二日目は丸一日使って市内の本屋巡り。絵本を探すことに夢中でほとんど写真を撮っていなかったのですが全部で6、7軒回りました。一軒一軒での滞在時間がやたらと長いのでチェックしていたお店全部は回りきれませんでしたが、それでも沢山の絵本に触れることが出来ました。欲を言えばもっといろんな作家の絵本を見つけたかったのですが、右も左も分からず棚の表記も一切読めない本屋ではうまく見つけることが出来なかったようです。結局ヨゼフ・ラダとズデネック・ミレルという超メジャーどころの絵本を3冊ずつ買っていました(それも日本でも割とよく見かけるものなのですが)。それでも日本で買うより断然安かったので大満足ですが。ヨゼフ・ラダの人気っぷりには驚きました。日本でも人気ではありますがチェコの本屋では必ずと言っていいほどヨゼフ・ラダの絵本が何冊も置いてあります。まさに国を代表する作家でした。

夜になるとプラハ市内は一層魅力的になります。ライトアップされ比較的治安のいい観光名所などは夜の散歩を楽しむことが出来ます。改めて夜のプラハ城を見に行こうとマラーストラナ地区から登城道を登っていくことに。延々と続く石段には中世の趣があります。ふと見ると聖ミクラーシュ教会のドームが一際荘厳な雰囲気を湛えていました。

プラハ城は深夜でも自由に敷地内に入ることが出来ます(有料の場所は閉まっていますが)。聖ヴィート教会はライトアップされ昼間とはまた違った表情に見えます。彫刻も光と影のコントラストで一層神秘的です。夜中は警備の人以外ほとんど人が居なかったので広大な敷地内を独占しているような贅沢な気分が味わえました。城から見下ろすプラハ市内も黄金に輝いて美しかったです。

早朝、日の出のタイミングを狙ってカレル橋に出かけました。一度昼間に行ったときは観光客と観光客相手の露店や大道芸人などでとにかく混雑していたので、改めて人気のないときに見たいと思って。カレル橋もプラハを代表する有名な名所となっていますが、橋の欄干には左右15体ずつ、合計で30体の聖人などの彫像が立っています。フランスのミッシェル・オスロ監督のアニメーション映画「夜のとばりの物語 −醒めない夢−」の中にカレル橋とその彫像が物語の重要なモチーフになっている一編があります。彫像には金の装飾が施されているものがしばしばあり、光が当たるとより美しく見えます。

雲の隙間から差し込んだ朝日に照らされて、眠っていたプラハの街並みが一斉に鮮やかに色づきました。

 

 

つづく