Homecomings『Continue』MV

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time /4min 33sec

completed year / 2021

client / 株式会社ポニーキャニオン、カクバリズム

 

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僕がHomecomingsのことを知ったのは最近のことだった。昨年(2020年)のクリスマスの時期、開催していた個展にイラストレーターのサヌキナオヤさんが来てくださった。その場でご挨拶した際にHomecomingsというバンドのアートワークを手がけていること、そしてそのバンドのメンバーも僕の作品を見てくれているということを伺った。その場では「ありがたいなぁ」と思っただけだったが、帰ってからふと気になったのでHomecomingsのことを調べてみた。iTunesで曲を聴いてみると、どこか懐かしいような、妙に落ち着くような感覚になって、「あ、このバンド結構好きだな」と思った。正直に言えば、1曲1曲がすぐ頭の中に入ってくるような感じではなかったのだけど(英語詩で歌詞が分からなかったというのもある)、聴くともなく聴いていて心地いいというか、ずっと聴いていられるなと思った。

さらにHomecomingsのことを調べているとGtの福富さんとサヌキさんは共作で『CONFUSED!』というコミックを出しているということもわかった。このコミック、以前から本屋さんで見かけて、サヌキさんのイラストの表紙を見て気になっていたやつだった。「え?ストーリーが福富さん?どういうこと??」と思い、すぐコミックを買って読んでみた。とても良かった。街に暮らす、特別ではない、寂しさを抱えて、でも優しさを捨ててもいない人たちの物語。それは福富さんの、そしてHomecomingsというバンドの根底にある価値観であるように思えた。

 

それからしばらくして、新しいアルバム『MOVING DAYS』がリリースされる少し前くらいに『Continue』MV制作の依頼が来た。MVをアニメーションで作るというのは、僕みたいな個人の作家にとっては大仕事で、正直なところ負担もかなり大きい。僕は今年、絵本制作や展示ですでに一年中予定が決まっていたこともあって、受けられるかどうか、不安もかなり大きかった。でも聴かせて頂いた曲は、本当に素晴らしくて、福富さんによるライナーノートを読んだとき、福富さんが詩を書いている光景が、夕陽に赤く染まる喫茶店のソファ席が、窓から見える通りやそこに並ぶ家々が、その窓から覗くかすかな生活の気配が、その街に暮らす人々それぞれのひとときが見えてくるような気がした。「その光景を絵にしてみたらどんなだろうな」という興味が勝って、僕はこの依頼を引き受けることにした。

 

『Continue』は、人と人との関係性の歌だと思う。さくらももこさんから何かを受け取った福富さんがこの詩を書いたように、この曲を聴いた誰かが別の誰かに何かを渡していくのだろう。そうしたことが無数に重なり合って、僕たちの日常は在る。

離してしまった風船が、風に吹かせたタンポポの綿毛が、空に放った紙飛行機が、窓から聞こえる誰かの歌が、壁に映る光と影が、道ですれ違う誰かの足取りが、今まさに灯った街灯の明かりが、誰かの存在を知らせる窓が、それと意識することなくどこかで誰かに続いていく。それはありふれた出来事で、大きな意味もドラマもないが、誰かにとっては「この先一生忘れないでいる光景」となるかもしれない。そういう美しさは、僕たちの日常のどこにでもあるのだ。

 

制作を始める前、Homecomingsのメンバーの皆さんとは一度だけ会った。練習終わりのスタジオの入り口で、スタッフさんもおらず、メンバーの四人と僕だけという、あまり仕事っぽくないシチュエーションで面白かった。僕はHomecomingsのYouTubeラジオも拝聴しているのだけど、YouTubeではめちゃくちゃ愉快に喋っている福富さんが、借りてきた猫みたいにシオシオ〜っとしていてびっくりした。そういえば実はシャイみたいな話もYouTubeでしていたな。本当にご挨拶程度しかお話していないのだけれど、メンバーの皆さんのSNSとか、YouTubeラジオでのおしゃべりとかを通して、僕は皆さんに親しみを感じている。メルシーベイクのポスターとか、西村培さんのポスターを家に飾っているという共通点もあり、結構趣味も合うんじゃないだろうか。このMV、多くの人に観て欲しいというのは勿論あるのだけど、個人的には四人に向けた手紙のような感覚で作った。Homecomingsが喜んでくれたら何よりだなと思っている。

 

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