部屋のこと

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先日部屋の中に散乱した資料やら何やらを片付けたら久しぶりにスッキリと居心地のいい空間が帰ってきた。ついでにそこら中を写真に撮ってみた。他所のお家とか作業場を見るのが結構好きなので、自分も作業環境の紹介がてら、自分なりに愛着を持っているこの部屋のことを少し書いてみようかと思う。

 

僕は普段自宅の1階で仕事をしている。この部屋は僕のスタジオであり書斎であり、単純に趣味の部屋のようでもある。部屋のどこに居ても絵画、ポスター、本の表紙など、自分好みのヴィジュアルが自然に視界に入り、自分もやる気になったり背筋を伸ばしたりする、というのがこの部屋の目指しているところだ。部屋の手前半分がPCでのデジタル作業と絵の具などの画材を使ったアナログ作業をするスタジオスペースで、奥の本棚に囲まれたスペースがちょっとした応接室も兼ねた書斎スペースとなっている。

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メインデスクは主にPC作業をする為の場所。アニメーションの作画は4年程前からほとんどデジタル作画になっているので、制作中ほとんどの時間をこの机の前で過ごす。使っているのはiMacとwacomの21インチ液晶タブレット。この机をはじめ、部屋の大きな家具は全てオーダーメイドの家具屋O.F.Cさんに作ってもらった。設計段階から打ち合わせをし、こちらの希望を聞いてもらいながらO.F.Cさんらしい木の風合いが素敵なガッシリとした佇まいの家具たちを作ってもらった。机は幅が180センチ奥行き90センチある。様々な資料やコンテなどを広げても余裕のあるサイズ。コード類をまとめる穴があり、引き出し側には外付けHDDやルーターなども収まっている。ワークチェアはエルゴヒューマンのオットマン付きタイプ。椅子をリクライニングさせオットマンを出すことでちょっとしたベッドになる。

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部屋には絵も多いが人形や置物もそこかしこにある。リサ・ラーソンやミナペルホネン、チェコに行った時に古道具屋で見つけた人形などなど。改めて眺めてみると絵と共通してかなり分かりやすく好みのベクトルが出ている気がする。照明・椅子・時計にもついつい惹かれてしまう。どれもその機能目的というよりも造形が好きで、ほとんどオブジェとして部屋のあちこちに鎮座している。

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小ぶりな机は主に絵の具で絵を描く場所だ。当初は書斎スペースのテーブルで絵を描いていたが、真新しいテーブルの上で絵の具を使うことに抵抗があり、いちいち道具の準備をするのも煩わしかった。その気になった時に身軽に絵を描けるようにしたいと絵の具で汚れても構わない古い机を用意することにした。画材は横のラックに収納してある。棚板が引き出しにもなっており、絵の具を横並びで視認できるのでとても重宝している。

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部屋の奥、2つの大きな本棚に挟まれた空間が応接室を兼ねた書斎スペースとなっている。本棚もテーブルもO.F.Cさん作。自分の好きがぎっしりの本棚に囲まれて、この部屋の中でも特に居心地がいい。足元の青いラグは丸亀の猪熊弦一郎美術館にかつてあったカフェレストMIMOCAの澄んだ青の絨毯に憧れて敷いたものだ。

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1つ目の本棚は本を飾る為の棚で、絵本や画集・写真集などが多く並んでいる。表紙を見せた並べ方をした時に、上の棚板が落とす影が邪魔にならないよう、棚の奥行きを少し狭めにしてもらった。真ん中あたりのブロックが「特集コーナー」として、その時々で飾るものを変えて楽しむスペース(撮影時はムーミン展で買ってきたトレイや図録を飾っている)。壁棚の下の収納はディスプレイ台も兼ねている。

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もう1つの本棚はTVボードでもあり、BDプレイヤー・AppleTV・各種ゲーム機が繋がっている。こちらには大型の本、小説やエッセイ、漫画、そしてアニメーションのDVD・BDなどが仕舞ってある。棚の奥行きが深めなので表に見えている列の奥にも大量の本が仕舞ってある。

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絵の具で絵を描くのに水が必要なので部屋の真ん中あたりには簡易的なシンクがある。また簡単にコーヒーを淹れるくらいは出来るようになっている。中山信一くんのボクサーの絵が作業する僕を励ましてくれるし、北村みなみさんのシルバーインクで刷られた絵もメタリックなシンクとバッチリ合っている。

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子供が産まれてからは生活時間がだいぶ変わったが、僕は長いことドがつくほどの夜型人間だった(今は「隙を見て夜型人間」くらい)。作品の構想は真夜中に練る方が捗る。だからこの部屋も深夜に思索に耽るのに良いようなライティングにしてある。真夜中に照明を絞ると、落ち着きと共にどこか厳かな空気が流れる。その静謐さの中でじっくりと自分の思考の中に潜っていく時間が好きだ。今でも作品の核の部分をよく考えたい時には家族が寝静まってからこの部屋に降りてくる。

 

この部屋は4年ほど前、風の強い日には建物ごと揺れるような古い家だった母の実家を建て直したときに出来た。予算の関係もあって、部屋自体は床を無垢の木にしてもらったのと室内窓をつけてもらった以外はほとんど何もないシンプルな箱にして、好きな家具や持ち物を置くことで自分らしい空間にしていくことを基本的な方針とした。自分の好みでありつつもなるべく流行に左右されず、長い間使い続けられるような普遍性を慎重に目指した。ミーハーさもある自分の好みがこの先ガラッと変わってしまったらどうしようという心配もあったが、幸いにもこの空間が好きだなという感覚は4年経った今でも少しも色褪せていない。ただ作家活動がよりアナログで絵を描く方向に展開し始めて、スタジオとしては少し窮屈に感じられるようにもなってきた。人形などの立体作品も作ってみたいと思っているのだけど、そうした作業にも不向きだ。制作のことを考えればスタジオは別に構える必要があるのかもしれない。それとは別に、本棚の収容キャパが早くも限界を迎えつつあるという問題にも頭を悩ませている。本はどんどん増えていくだろうし、できれば本棚も増やしたい。今は部屋の今後を少し考えているところだ。これからこの部屋の姿も少しずつ変わっていくことだろうと思う。