個展「ぼくの街においでよ」のこと その2

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前回からのつづき。ついに個展の幕は開けた。

 

前述したアニメーションのお仕事もこのときまでには全て片付き、2週間という長めの展示期間ではあったが、毎日びったりと在廊することが出来た(1日だけ用事があり在廊出来無い時間帯もあったが)。作家本人がいると落ち着いて作品が観られないという人もいるかとは思ったが、初めての個展ということもあり、僕自身は来てくれた人が作品を観ている様を見ていたかったのでご容赦いただくことにした。

 

連日沢山の人が来てくれ、始まる前に抱いていた不安はすぐに吹き飛んだ。平日だとしばらく人が来ない時間帯というのもあり、そういうときにはもうこの後永遠に人は来ないんじゃないだろうかと思われたが、別にそんなことはなくしばらくしたら今度はいっぺんに沢山の人が来たりしていた。

期間中僕はだいたいレジにいたので、作品やグッズを買ってくれたお客さんと会計時に少しお話をさせてもらうことが出来た。ありがたいことにほとんどの人は何かしら買い物をしてくれたので、本当に沢山の人とお話させていただいた。多くの人がSNSを通して僕を知ってくれたようだったが、お話をさせていただくうちに「自分は普段、なんて素敵な人達に作品を観てもらっていたのだろう」ということを実感していった。言葉にすると安っぽい文句のようだが、体感としてはとても重大な出来事のように感じられた。それまでどこか概念のようであったフォロワーさんという存在が、現実に一人一人の個人なんだということが実感できてとても有難く思えた。

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今回、自分の人生の中でも初めて自分の絵に値段をつけたので、個展が始まる前はどれぐらい絵が売れるのか、まったく予想がつかなかった。さすがに全然売れないということは無いだろうが、まあ半分くらい旅立てば良い方だろうかと考えていた。結果的には23枚の作品のうち21枚が売れた。素直にとても嬉しい。僕は家で色んな作家さんの絵を飾って眺めることに日々小さな喜びを感じていて、そうした自身の体験と同じように、自分の絵が誰かの生活の側にあってくれたらと思う。

絵を飾って眺めるのは、必ずしも高価な原画じゃなくても良い。むしろ僕は印刷物ならではの味わいが好きだ。そういう理由でポスターやポストカード、作品集など気軽に持ち帰ってもらえる絵のグッズを作った。おかげさまで売れ行きも良く、会場に用意したグッズの多くは売り切れた。人それぞれの距離感で絵を楽しんでもらえたら嬉しい。

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今回、ほとんどの時間をレジで過ごしたということは書いたが、普段は職業柄、自室に一人きりでひたすら作業してばかりいるので、個展期間中は「お店屋さん」の気分を味わえたことが密かに楽しかった。僕は美術系以外のアルバイトもしたことがないので、こんなに人に応対しつづけたことは人生初だったかもしれない。普段は決められた時間の中で動くことが苦手なタチではあるが、個展期間中は毎日ギャラリーに通うのが楽しかった。

 

個展ではオープニングパーティーというものが付き物のようではあるが、正直「パーティーってなんだ?」という感じだったので、代わりというわけではないがゲストを招いてイベントをやることにした。

1つ目はアニメーション作家の若井麻奈美さんとのYouTubeのライブトーク配信。お互いSNS上でGIFアニメを投稿しているという共通点(というかそもそも若井さんのそうした活動に影響されて僕も始めたという部分がある)があったのでそのことについてお話した。東京には遠方で行けないという人も多そうだったので、そういう人達にも楽しんでもらえればと思いライブ配信という形をとった。生で話すのとはまた違う雰囲気で話が出来たので楽しかった。

2つ目はイラストレーターとアニメーション作家の北村みなみさんと会場でトークをした。北村さんとも、イラストとアニメーションの両方を作っていることや、作家としてのスタイルが定まってきたのが割と最近のことという共通点があり、以前からシンパシーを感じていたのでそのことについてお話させていただき、こちらもとても楽しい時間となった。トーク当日が台風が接近してきているという悪天候に見舞われ、開始時にはかなり少人数でのスタートとなったが、トーク中に段々とお客さんが増え、最終的にはにぎやかだった。

3つ目は再び若井麻奈美さんと、会場で一緒にコラボイラストを描いて、出来たカードを販売するというイベントを行った。これは当初予定していた内容が無理になった為に急遽代替的に行ったものだった。わりとおまけ的なイベントだったので気楽にやろうと思っていたのだが、沢山の人が来てくれた為にギャラリー内は大変混雑し、予想以上に緊張してしまいうまくお客さんの方を見ることが出来なかった。楽しかったのだけどもう少しきちんとやっていればお客さんに迷惑をかけずに済んだのではと反省している。若井さんは無茶なお願いだったにも関わらず素敵な絵を沢山描いてくれた。

今回お二人をお誘いして何をやろうかと相談していたときに「一緒にコラボグッズを作りますか」という話になり、若井さんとはワッペン、北村さんとはステッカーを作った。誰かと一緒に1つの絵を描くというのが初めての経験でうまく想像出来なかったが、お二人の力で凄く素敵に仕上げてくれた。お二人ともプロなのに、人の個展の為に絵を描いてくれるなんて、感謝してもしきれない。

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2週間という長丁場(正確には13日間)、重ねて言うが本当に大勢の人が来てくれた。物販の記録からざっくり勘定したところでは大体700〜800人くらいの人が来てくれたようだった。数字としてみるとなんだかよく分からないもののようだが、僕には毎日在廊していた体感を通して本当に有難いことだと思える。足を運んでくださった皆様に心より感謝したい。

初めての個展から良いことが沢山起こってしまったが、作家としての活動はまだ始まったばかりだ。また皆さんの前で作品を披露できる日のことを楽しみにしている。

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